大淀川のリノベーションが、『大淀川リビング』でついに動き出した

水辺の活性化で特区を目指そう!

そんな大きな目標に向かい大淀川の水辺リノベーションは始まった。私に声がかかったのは2019年2月のこと、『宮崎市街地 水辺の賑わいづくり ワークショップ』の講演依頼を受けたところからスタートした。宮崎市の魅力の一つである大淀川の水辺を題材として、「大淀川」と宮崎市街地の「まち」をつなげる“水辺の賑わいづくり” について、意見交換するものであった。4ヶ月前には都城市(宮崎県)でかわまちづくり実行委員の皆様に講演させていただいたばかりで、宮崎県の水辺へのポテンシャルの高さをすでに感じていた。

宮崎市内は中心市街地を活性化を目指したリノベ物件が目立ち、若者が通りを闊歩している。

 

かつてはハネムーンで栄えた宮崎

昭和20~40年代、大淀川沿いには多くの観光ホテルが立ち並んでいた。宮崎市内にはヤシに似たワシントニアパームやフェニックスが植栽され南国リゾートを感じる風景に、ハネムーン・ブームで日本中の新婚さんが押し寄せたことで、大淀川界隈にも多くの賑わいがあった。宮崎は水害が多いまちでもある。河川改修工事によって、それまで堤防道路から眺めていた大淀川の風景は、堤防のかさ上げによって遮られてしまった。利水の為であり仕方のないことだが、昔のように歩きながら水面を見られなくなったのは残念である。

かつての宮崎はフェニックスハネムーンと呼ばれ大勢でにぎわった。

タノタビHPより引用https://recommend-travel.com/miyazaki-aosima-sinkonryokou/

 

大淀川リビングが生まれるまで

現在、大淀川では「NPO法人大淀川流域ネットワーク」をはじめ、様々な団体が流域で活躍されていて、今後のリノベーションでは、水辺が大好きな人との新しい出会いに期待を込めた。

初回のワークショップではラジオパーソナリティ、まちづくり系有識者、商工・観光関係者、市民団体やNPO法人、行政職員、そして学生も参加するなどバリエーション豊かにスタートした。

講演では、『水辺とまちをつなぐ賑わいづくり』として、「おしゃれなリ・BAR」や「川TERRACE」など、実践を通じたコンテンツのつくり方を話す中で本音や苦労談を踏まえた内容が大淀川流域の皆様に共感され、『大淀川リビング』へと繫がっていったのであろう。

ワークショップは多様な職種の方が集まり常に熱気にあふれていた。

 

アドバイザーとしての役割も担い、数ヶ月に一度のワークショップを重ねる中で、参加者がやりたいこと、楽しみたいことが徐々に見えてきた。しかしそれは、賑わいづくりとして成立するものか。楽しみたいことは、何のために、誰のためなのかを具体的に理解するために、私たちが目指す「ねらい」を言葉として定めることにした。ワークショップが中盤に差し掛かり、カオス状態の頃の出来事である。度重なる話し合いで、私たちが目指す理念は、『宮崎と言えば、大淀川の夕日と橘公園やろ!』に決まった。「たまゆら」の著者である川端康成が愛した夕日が水面に映える大淀川、やはり宮崎の人には、根強いアイデンティティが大淀川にあったのである。

アイデアを現実化しコンテンツとしてつくりあげていく。

 

会議の後は懇親会。イノベーションするにはここが重要だったりする。

 

さて、市街地の一部としての水辺の賑わいづくりを進めているわけだが、水辺だけに特化せず、いかにまちと連携するのか何度もワークショップを行った。宮崎観光ホテル(通称ミヤカン)をはじめ、多様な企業が積極的にかかわり始めたのもとても重要なポイントで、住民と企業と交流者が同じ理念のもと、大淀川に感動することが継続の礎となる。

とはいえ、ワークショップを複数回開催していく中で、参加者は議論では物足りず、早く行動したい!と強い要望や企画案も出てきたため、本来はコンテンツづくりやまちの調査などをしっかりやりたかったが、前倒しで社会実験を企画・実施していく方向となった。

宮崎観光ホテルやマンションが並ぶ通りにはロンブルテントが並び、西洋の雰囲気が漂よう。

 

今西正さん(若草hutte & co-ba miyazaki)をはじめ、若い世代を中心に、大淀川リビングのコンセプトが提案された。「リビングは、生活・暮らし・生きる場所。家族・仲間・動物・植物も自然と集まるくつろげる場所。 河川敷はみんなのリビングルーム。水辺を眺め、風を感じ、美味しい物を食べ、好きな事して、ゆったりと流れるCHILLな時間。河川をあなたの楽しみ方で楽しんでみましょう。河川の可能性は無限大、アナタの楽しみ方で。」というのである。一見、よくあるイベントのように見えるが、主催者としてのアイデンティティがにじみ出ている。これが宮崎人の誇りなのだろうか。短距離をタクシーで移動したとき、「近いけどすみません。」と恐縮しながら言ったら、ドライバーさんが「都会では乗車拒否とかあるって聞くけど、宮崎の人はそんなことまったく気にしませんよ。」と返事された。こういうところに宮崎人の気質があるんだと再認識した。「都道府県「幸福度」ランキング2019」第1位(ブランド総合研究所の実施した「都道府県『幸福度』ランキング」)に選ばれる理由もわかる。

さて、やるぞ!と決まってからわずか1ヶ月。みんなでやらなければ進まない。私は福井にいてやきもきしていたが、そんな心配はよそに、着々と準備が進んでいったのである。ロゴをつくり、DIYをして、新聞、テレビ、ラジオ、SNSなど宣伝広報もみんなで取り組んだ。

DIYで什器を手づくり。楽しみながらまちを面白くしていくのもコツ。

 

地元のデザイナーも加わっていい感じのチラシとロゴが完成。一気にやる気とアイデンティティが増す。

 

 

雨でもフルパワーの宮崎アイデンティティ

当日が大雨予想となり不安でいっぱいの中、前日の11月23日(土)に最終準備のため宮崎を訪れたところ、なんと、会場が変更していたのである。本来は大淀川沿いの約1km区間を長いリビングとして設定していたが、雨でも中止にはせず機転を利かせたのである。なんと、橋の下。実は橋脚の耐震補強工事があり、そのヤードとしてフェンスで囲まれているのである。ところが、「田中さん、ここでやるよ!」と何ともあっけらかんというのである。つまり、工事現場の中が会場に変更するのである。これには驚いた。通常、工事現場の中だから、危険だからムリ!と言われるのがオチだが、今回は全面的に応援してくれるのである。ここにも宮崎アイデンティティがあるのだろうか。仮設トイレを借してくれたり、テント設営の協力してくれたり、当日の工事用照明器具を段取りしてくれるなど、うれしいご協力をたくさんいただいた。

雨で中止になったアクティビティも多かったが、その分思いもよらない協力やアイデアが重なり、「雨降って地固まった」のである。午後に大雨と風が吹き飛ばされそうなテントを参加者も一緒になって支えた。Eボートも出航し大人も子どももはしゃいだ。雨上がりのクルーズで眺めた夕日とっても美しく、私たちが目指す理念がそこにあった。

 

『宮崎と言えば、大淀川の夕日と橘公園やろ!』

この夕日がこれからも繋いでいくべき宮崎のアイデンティティ

 

 

この合言葉のもと、まちと水辺が一体となる賑わいづくりを実現するために、水辺のリノベーションはさらに加速していく。

 

スピンオフ

 

時には、桜の下で会議をした。楽しむことを忘れずに。

 

宮崎名物の辛麺は辛いだけじゃなかった!(笑)

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一般社団法人環境文化研究所のミッションとは

環境文化研究所は、自然環境、民俗文化、伝統技術などを後世に繋ぎ、持続可能な社会を実現するため、専門性と豊かな個性を有する研究員が蓄積している多様な経験や知識を活かし、企業・行政および専門家等による連携活動に参画し、地域発展を支援する活動とともに、地域の暮らしや体験を通じて自然の恵みを巧みに活用する技術と知恵を身に着けた人材を育成し、持続可能な社会の実現を目指す価値観の醸成を図ること、および地域の自然資源や人文資源などの地域資源を生かした産業を育成し、雇用を創出することで環境保全および地域振興に寄与することを目的とし、1997年1月1日にスタートしました。2016年7月11日に、一般社団法人として設立し、更なる地域貢献を進めていきます。

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